Dr.ニール君
ニール・フェスト
Drニールバンド
機械が俺を嫌っている
hirokoのリベンジ
Dr.ニール君のこいつを聞け
Mr.ナスティー君




Dr. ニール君

By Hiroko in September 1996

誰でもちょいと風変わりな友達が1人や2人いるだろう。私にとってこの主人公 Dr.ニール君はそんな中の一人だ。
彼は熱狂的なニール・ヤングのファンである。 ニール・ヤングに関することで知らないことはまず無い。そしていつも自分の言うことが正しいと変な錯覚を起こしている少々自意識過剰な人間だ。 それで訳でこのニックネームを私が与えたのだ。

彼の本名はLeslie Greenで、42歳の図体のでっかいおっちゃんである。 何度か私たちは彼の家に招待されたり、一緒にコンサートに行ったり、パブで 飲んだり交流している。スコットランド人らしく、アルコールの許容量はかなりのもの。 いくら飲んでも酔いつぶれるなんてことがない。始めておじゃました時のことである。 閑静な家に奥さんのグエンと息子2人、そして何時おじゃましてもボールを咥えている 真っ黒の 犬1匹が出迎えてくれた。

彼は友達を家に招くのが大好物で、其の日も先客が2名くつろいでいた。 居間に入ってびっくり。所狭しとオーディオ、ニールのポスター、CD、レコード テープ、本。なるほど・・・かなりのフリークだ。と感心してしまう。 主人公のDr.ニール君は、勿論ニール・ヤングのTシャツに半パン、そして ダンガリーシャツをだらしなく引っかけ、皆にBEERやワインを渡したりしてホスト役に 徹していた。サラウンド・システムのステレオのヴォリュームをもうエエで、という くらいに上げる。勿論話題は「ニール・ヤング」に関してしか彼にとっては興味が無い。 奥さんのグエンはドカンとソファーに腰を深々と下ろし、ニール君がせかせかと 大きな図体を曲げて台所と居間をお盆をもって往復していようが動かない。 「ああ、日本じゃこうはいかんわな。」と微笑ましくニール
君のおさんどんぶりを 観察していた。

グエンに「子供さんは誰のファンなの?」と聞いてみた。 「毎日こうなのよ。NO CHOICE!!!」なるほど・・・彼女の母体にいる頃から息子達は マインド・コントロールされてしまっているらしい。 まぁ、年頃になってきてROCKやPOPSに興味が出るようになる。当然ステレオなんぞで音を 大きくして聞きたいものだ。

でも普通の家庭なら、両親から「ちょっと、音を小さくしなさい!」と注意されるもので あるが、この家庭では反対なのだ。Dr.ニール君がええ調子でガンガンのボリュームで 聞いている。すると、2階から息子が降りてきて父に言うのだ。「おとーちゃん、 音小さくしてくんない?俺宿題やってんだ!」と。そこで、ニール君も負けてない。 一応1ランクはボリュームは下げるものの、喧しかったら友達んとこでやってこい。 ここは俺の家だぁ!・・・と。少々大人と子供が逆になっているようである。

アルコールが効いてきて、話も弾む。ニール君はルンルン気分でギターを 持ち出してきた。「HIROKO!ジャムしよう!」と、もう1本のギターが手渡されて しまった。しかし、私も長年ギターから遠ざかっていたし、ボロンポロンと遣ってみたが 爪が伸びていて美味くは弾けない。「だめだ、だめだ!HIROKO、爪切らないと!」 するとどこからか彼は「爪切り」を持ってくるではないか!もうこうなったら仕方が 無い。学生時代に戻った気分になってしまって、マニュキアで奇麗にコーティングされた 長い爪はニール君の立ち会いの下、丸坊主となってしまった。そこからは意気投合して しまい「OHAIO」「HEART OF GOLD」等の懐かしの名曲を歌いまくった。 音楽に国境はないと痛切に感じたひとときだった。

翌日スコットランドにやってきてから始めて厳しい二日酔いに襲われた。 おまけにどうやって家までたどり着いたのか全く不明なのだが、私のスニーカーと クリスの皮靴は犬のうんちがへばりついていた。「ウンがつく」とここでもラッキーな ことらしいがあまり感心できたもんではない。

この夏彼の2週間の休暇はヨーロッパを車で回ると聞いた。パリとロッテルダム・・・ ニールヤングのヨーロッパ・ツアーのおっかけをしに行くらしい。

その後スコットランドも公演が決定し私たちもグラスゴーでのチケットを購入出 来たので共に行くことになった。7月21日Dr.ニール君の手配した20人乗りの 小型バスに乗って、ほんもののニール・ヤングを楽しんだのだった。

さて、私は録音機能のついたウォークマンを持っている。コンサートに行く時には 必ずセットして、やってはいけない隠し撮りをいつも成功させている。 驚くことにUKでは、どこの電気屋にもカタログ・ショップにもこの録音機能なんて 付いているウォークマンなどないのだ。その上長時間録音可能な150分テープも 存在しない。UKでは120分が最高なのであるから、従ってこの機械とテープは実に 貴重で珍しく重宝なものなのである。勿論ニール君は羨ましくてしょうがない。 皆のためにもいい録音ができればいいなと思っていた。しかしニール君もさすが フリークである。たかがウォークマンくらいで、負けてはいられんとばかりに いろいろ人に手配し、どんな録音方法知らないがアマチュアの私のものとは別の プロに頼んでいたのだ。そして、それをCDにして売るということまで やってのけたのだが、個人の自費製品なので2枚組みセットが50枚。タイトルや カバーも自分で作ってしまった。タイトルが「HOT NIGHT IN GLASGOW」と、彼は気に 入っているようではしゃいでいるのだが、「匂ってくる程、臭いタイトルやで、 おっちゃん!」と、喉まで込み上げてきたのをぐっと堪えた。

しかしここまでやっちゃうとは、フリークにも年期が入っている。出来上がった CD50枚、、、1setが£38.00。これはアマチュア録音にしてはちいと高すぎる。 それでも、ファンにとっては、またこのグラスゴー公演に参加した者にとっては いい土産と思い出となるものである。
彼は日曜日に開かれた、「RECORD フェアー」に 出店し、全てを売って来たのだからたいしたおっちゃんである。

さて、このCD、確かにドルビシステムを効かして観客の拍手や歓声を押さえては あるが、肝心のステージングの音やバック・サウンドまでもドルビが聞き過ぎていて 篭った感じがありありと伺える。遥かに私の録音の方が、クリアーで気持ちがいいのだ。 さすが天下のSONYの超センセティブの小型マイクだ。

その後、誰もがそのCDよりもHIROKOのカセットの方が優れていると噂が広まって しまって、ニール君は面白くない。折角大枚つぎ込んで作ったCDよりもHIROKOの カセットの方がクリアだというのだから・・・。

Dr.ニール君はついに降参したのだった。「HIROKO!テープ貸して!」とTELが入った。

いつも汚いシャツにジーンズ姿で、でかい図体を曲げながらせかせか動き回っているDr. ニール君。彼の事務所までテープを届けに出向くと、これまた驚いた。スーツをパリーッ と着こなした実にダンディーな姿なのだ。

彼の職業は弁護士なのである。鼻から鼻水が零れ落ちるくらいのギャップに参ってしまっ た。実に素敵なキャラクターである。

明日はニール君のお家で「バーベキュー・パーティー」が開かれる。またまた 「ニール・ヤング」の話題で華が咲く
ことだろう。




ニール・フェスト

By Hiroko in November 1996

えっ?何?「ニールヤング・フェスティバル」がアバディーンで開かれたのかって? 実はそうではない。10月21日(月曜日)は、Dr.ニール君の43回目のお誕生日、 そしてその前日20日は彼の息子のピーター君の11回目の誕生日。
という訳で、この2人の合同誕生パーティーを10月20日(日曜日)午後2時より、 Dr.ニール邸において、盛大に祝おう、そしてそれを勝手に「ニール・フェスト」と 命名されただけのことである。

本物のニール・ヤングが聞いたら、さぞかし怒ることだろう。

約1ケ月も前から、電話でこの「ニール・フェスト」に是非とも参加するようにとの 通達を受けていた。「料理はたらふく、僕が腕を奮って用意するから、HIROKOはギターの 練習をするんだぞ!」

え?何?今更バンドをやろうって訳でもないのに・・・と半ば強制的に出席者名簿に 加えられてしまっていた。

Dr.ニール君には、日本の酒、月桂冠を購入し、インターネットのニールヤング・ホーム ページより、数枚のピクチャーをシール用紙にプリント・アウトし、ベタベタと月桂冠の ラベルに貼り付け、即席ニール酒をこしらえ、ついでにバースデイ・カードにも目一杯 ベタベタと貼り付けてやった。

息子のピーター君には、スタートレック狂の彼のために、近所のサイエンス・ フィクション・コミックshopにて、カードとプレゼントを揃えた。

私もこの日は早く起きて、Dr.ニール君の為に、多分食べたことないだろう「巻き寿司」 作りに励んだ。巻き寿司とは言っても、卵、キューリ、カニスティック、レタスを巻いた 「サラダ巻き」、「エビ巻き」、「スモークサーモン巻き」と、3種の色鮮やかな巻き 寿司を完成させた。

彼はB&Bやゲスト・ハウスなんかが点在する、閑静な3階建ての大きな家が建ち並ぶ 住宅街に住んでいる。弁護士という、その職業柄インテリアや調度品も一流ものを揃えて いる。貧乏暮らしの我々のフラットとは、雲泥の差である。グラス1つにも最高級品の エジンバラ・グラスをずらりと取り揃えてある。しかし、彼の家のどこを見渡しても 頭が痛くなりそうな分厚い法律の本が見当たらない。

実は彼は私の旦那様クリス君の父上ジョン氏と同じ事務所で働いているのだ。ジョン氏は 長年警察に勤務していた超ベテラン警部だったが、退職後この事務所で「殺人」などの 事件勃発に備えての調査、情報種集に励んでいる。

その父が言うには、Dr.ニール君、裁判所へ出かけて行くのが嫌いだそうだ。???? あんたの仕事だろうが!と、笑けてしまう。ちゃぁんとお仕事やってんの?と、 オフタイムの彼を見ているとしみじみと感じてしまう。

午後2時、プレゼントとBEERを持参し、明かりが赤々と灯るDr.ニール邸のチャイムを 押した。いつもなら滅多に腰を上げない奥様のグエンが出迎えてくれ、コートを 預かってくれたりして、この日ばかりはホスト役に徹していた。それもそのはず、 旦那様のDr二ール君は昨日から、キッチンでせかせか料理作りに励んでいるのだから、 それでも料理の大嫌いなグエンも、「私も手伝ったのよ!」と自慢げにチョコレート・ ワッフルを指差しながら、キッチンへと案内してくれた。

キッチン前には、お客様用のBEERの冷蔵庫が備えてあり、「HELP YOURSELF」と、開いて BEERを取り出してくれた。ここまでの仕事は普通男性の仕事なんじゃぁ?と、 面白可笑しく見ていた。

地下にはキッチン、大きなダイニングルームがあり、1階はリビングとDr.ニール君の 名付けて「ニールの小部屋」:ニールヤングに関する全てのもの(CD、レコード、 テープ、VIDEO、書籍、楽譜、ギター、etc.)が取り揃えてある部屋、そして2階は ベッドルームに子供部屋となっているが、この日は2階を子供たちに開け放し、大人は キッチン、ダイニングルーム、リビング・ルームに思い思いのお気に入りの部屋で 寛いでいた。

Beatles狂のデビッド夫婦、マージョリー家族、ディラン狂のポール家族、絵描きの マカリスター氏、レコードショップのフレッド家族、グエンの親戚、兄弟、家族と 様々な取り合わせで、ごった返していた。

キッチンに案内された私たちは「HAPPY BIRTHDAY!!!」と言いながら、入っていくが、 「明日だ!俺の誕生日は!」と、相変わらず可愛くない。いつもどおりのヨレヨレの ニールヤングのTシャツにジーンズ姿の彼が、キッチン中に響き渡るニールヤングの BGMに酔いしれながら、せっせとオーブンを開けたり閉めたり、コロッケを揚げたり、 盛り付けをしたりと忙しそうに働いていた。料理を作りながら、ワインやシャンペン、 BEERをちょびちょび飲んでいるので、すっかり酔っ払っているようだった。

しかし、見た目にも色鮮やかなプレートの数々が仕上がっていく。もうお腹がペコペコで ある。どでかい図体を曲げながら、おおよそグローブのような手で、ちょまちょま 盛り付けをしている姿は、やっぱり微笑ましいものだ。「2時からだぞぉ!遅れるなよ!」 なんて豪語していたくせに、料理の進行が出遅れたのか、午後4時、すべての 料理が完成し、お腹がペコペコの私たちゲストは、ダイニングルームのテーブルに 鮮やかに盛られた莫大な量のDr.ニール君お手製の料理に群がった。料理はどれも 素晴らしいものだった。

Dr.ニール君が、HIROKOの寿司だ!と、持参してきた巻き寿司群を並べると、皆は初めて らしく珍しそうに恐る恐るつまみ出した。「ファンタァースティックぅー」の嵐を受け、 一人一人にこの巻き寿司の説明に追われていた。

グエンまでも気に入ってしまって、食べなれた夫の料理よりも、寿司をつまんでいる。 当然面白くないのがDr.ニール君。何も人気を得ようとして持ってきたのではない。 彼の為に作ったのに、彼は横で口を尖らせて、手をつけようとはしない。 全くしょーのないひねくれ者だ。

一見茹で卵をフライにしたようなコロッケを見て、「これ何ぁに?」とDr.ニール君に 尋ねる。彼はにんやりしながら、「サプラァーイズ!」と言いながら、私がかじる口元を にやけながら見ていた。名付けて「ビックリ・コロッケ」の正体は、マッシュポテトの 中央にチェリートマトが、丸ごと入っていた。

「何がビックリなの?」別段ビックリに値するようなハプニングは起こらなかったのだ。 普通なら、ここでがぶりとかじると、中のチェリートマトがブチューっとはじけて、 服に飛び散る仕掛けとなるはずだったのが、昨日作って冷凍していたせいで、完璧に中の トマトが凍っていて、はじけるはずのトマトが飛び散らない。またまたDr.ニール君は、 思惑が外れて面白くない。

すっかりと満腹になった頃合いを見計らって、ニール君は声高らかに「さぁ!ニール・ フェストの始まりだぞぉー!」と、カウベルをコンコンと鳴らした。ニール・フェストは 1階のリビングで開始された。ご自慢のサラウンド・システムに、ニールヤングの ビデオを放り込み、ボリュームを鼓膜がビンビン震えるほどに上げて、深々と クッションのいいソファーにうずくまって実に御満悦。ついさっきのとんがった口は、まろやかなカーブを描いていた。

一応、我々はゲストの身、こう大きなボリュームではまともに話も出来ないので、我慢し ながらニールヤングのビデオを見ていたが、そのくせ彼はせわしなく部屋を出たり 入ったり。落ち着きという言葉は、彼の辞書には無い。

一方、地下のダイニングルームでは、グエンを取り巻く静けさを愛するグループが、 ゆったりと、話にふけっていた。何とも対称的な部屋である。

Dr.ニール君は、勿論酔いがどんどんエスカレートしてくると、ボリュームが1つ、また 1つと上がっていく。堪り兼ねたグエンが上がってきて、「小さくしなさい!」と、 リモコンを取り上げる。母親に悪戯を見つけられて、ビビリ上がるいたずらっ子の ような顔で、グエンを見上げながら、「あ。これっ!僕の一番好きな歌だ!ハニィーー! 知ってるだろう?これが終わったら、ボリューム下げるよ。ハァーニィー!」と、 甘えるのだが、「あなたは一体いくつ一番好きな歌があるのよっ!」と、冷たく言い放つ。 これには、皆で大爆笑の嵐だった。いくら大声で威張っているように見えても、グエンの 顔色を伺いながら、グエンの一言一言に、ドでかい肩と背中が縮みあがっているニール君。
この一家の影の大親分はグエンであることが一目瞭然の光景に、居合わせたゲストは皆、 クックックゥー、ケッケッケェーと、笑いを殺して見守っていた。

何度かボリュームが上がったり下がったりを繰り返して、Dr.ニール君がふと部屋を出て 行った隙にグエンが再び現れ、「処刑よ!」と、言いながらリモコンを操作し、 ニールヤングのビデオが取り出された。今度は彼女が、自分の大好きなCS&Nの ビデオに交換したのだった。しかし、彼女もそれをじぃーっと見ていることなく、 部屋を出て行く。

戻って来たのが、Dr.ニール君。いきなり、「何だ!何ぁに?何なんだ!これは一体! 誰だ?誰だ?誰なんだ?こんなファッキン・ビデオをつけた奴は!お前か?お前か? HIROKOか?」と、パニック状態だ。クリスが穏やかに、「カーム・ダウン!多分ミセス・ グリーンだと思うよ」と、なだめたが、「こーんな、ファッキン・シャイト! (ファッキン・シット)皆で見てるのか?何てこった!」と、怒りながらすねて、 ニールの小部屋に閉じこもってしまった。こうなると、手におえない子供とおんなじで ある。

別段我々は放映されているビデオがニールヤングであっても、CS&Nであっても構わな いのだ。皆が音楽を愛する大人であるからして、いろいろと音楽の話がしたいのだ。 ビデオは単なるBGMに過ぎない。しかしニール君にとってはそうではない。 ここに居合わせているゲストは、心からニールを愛するファンだと勘違いしているの だからして、彼の意向としては、真剣に私語を慎み、ビデオに熱中していなければ ならなかったのだ。

例えば、小学校の教室で、先生から自習していなさいと言われ、先生がいる間は、 真剣に勉強しているフリをし、先生が一歩教室から出て行くと、騒ぎ出す生徒たちの ように、Dr.ニール君が部屋にいる間は、真剣にビデオに集中していたが、彼が一歩 部屋から出て行くと、誰もがおのおの世間話や音楽の話題を話し出す。誰もビデオ なんて見ていない。何ともやれやれなおじさんである。

よく気にいらない事が有るとスネて、自分の部屋にこもってしまう子供がいるが、 まさしくそんな子供のように暫くは出ては来ない。しかし、ゲストの皆は誰もDr.ニール君 の機嫌を伺いには行かない。そうだ。知っているのだ。一時はスネてこもってみても、 皆はDr.ニール君の落ち着きのなさを充分知っている。寂しがり屋の性格も知っている。 またまた機嫌を直して出て来ることを、誰もが知っていた。

案の上、暫くして、機嫌が悪いながらもDr.ニール君は、ビールやワイン、ウイスキーと 次々と運んできた。彼の飲み方は、いつお邪魔しても強引にちゃんぽんされてしまうので、 翌日は2日酔いが甚だしく、今回は気を付けようと注意していた。

案の上、Dr.ニール君はすっかり出来上がってしまっていた。ビールを開ける栓抜きが 見当たらず、やたらと声がでかくなって叫び出した。「俺のファッキン・栓抜きが ねぇー!ファッキン栓抜き!」と、ファッキン、ファッキン!!と連発する。 ???ホンマに弁護士やってるんだろうか?こんな調子で法廷で「ファッキン、 ファッキン」って叫んでいるのではなかろうなぁ・・・と心配してしまう。

ヨレヨレになりながら今度はギターを持ち出してきた。しかし、いくらエネルギッシュに 満ち溢れている彼も、さすが昨日からの料理三昧でかなりお疲れの様子。ニールヤングの 曲を片っ端からボロボロと弾き出したが、思うように美味く弾けない。そこで私は もう1本のギターで、フォローをしてやっていた。ゲストの皆は「HIROKO、何か やってくれ!」とリクエストを受け、昔バンドでヴォーカルをしていたという マジョリーンと2人で、「HEART OF GOLD」をデュエットしながら、実に美味く息を合わ せてやってしまった。

拍手喝采を浴びてしまったので、はたまたDR.ニール君は面白くない。その後、何曲か PLAYするのだが、美味く弾けないニール君。「この曲は後にしよう!この曲はコードを 知らない。この曲は、そんな風にレコード通りに弾かなくていいんだ!」などと、自分が 弾けない曲にはことごとく文句をたれる。「そんじゃぁ、何が弾けるねん?おっさん!」 である。もうまるでだだっこを相手にしているようである。

彼をメインに盛り立ててやるつもりが、何か自分が優位に立てないことに苛立っている ようだ。しかし、はっきり言っちゃうと、彼には全くリズム感というものを持ち合わせて いない。フォローするのも大仕事だ。

「何故だ?何故美味く弾けないんだ!だめだ!忘れた!」を連発し、苛立ちながら陰気に なって行く彼に「Dr.ニール!BEERが足りないんと違う?」と、なだめてやると、 「そうだ!Oh!My HIROKO!」と、頷いてBEERをグビグビ・・・・たちまち機嫌は回復する。 陽気になったり、陰気になったり、本当に忙しいおじさんである。

パーティーのお開きは、午後10時。皆で又の再会を約束し、Dr.ニール邸を後にした。 本来ならば、本日の主役であるはずのピーター君の為に11本のロウソクまで立てて用意 されてあったバースデイケーキが、カッティングもされず、もの悲しくダイニング・ ルームの片隅で、我々を見送っていた。





Drニール・バンド

By Hiroko in May 1997

Drニール邸にて太々と、アコースティック・バンドの練習が始まって早3ケ月。結成 当初はどうなることやら・・・と心配していた。あの個性の極めて強くアクのあるバ ンド・マスター,Drニール君を始めとするメンバーの個性は全く違うし、音楽性もバ ラバラ。多分1〜2回のギグで、自然消滅の形になるだろうと思いきや、現在進行形 でますます張り切っている今日この頃のDrニール・バンドである。
メンバー紹介を一様しておこう・・・。バンド・マスター(自らBOSSと名乗っている) ご存知Drニール君。クリスマスに購入した12弦YAMAHAギター&ヴォーカルを担当。 メンバーの送り迎え。マージョリー(マージ)は昔学生時代はバンドでヴォーカルをや っていた。フットボールのセルティックとビートルズ狂の2児の母。迎えに行くと必 ず旦那と喧嘩してる・・・。デビット(デイブ)君。時々参加するギターリスト。バ ンド内では、Drニールとマージの間に入って、円滑剤の役割。日本を代表するROCKド ラマー、Hirokoはどーしたことか生ギターを可愛く? Drニール君から手渡されたセ ロテープがバシバシ張り付いた実に弾きにくいオンボロギターを弾いている。

最初は控えめだったDrニール君は、ヴォーカルを尊重して、ビートルズ・ソングをピ ックアップし、マージを喜ばせていたが、キーが合わないマージがキーを上げろと抗 議。するとキーを上げると、とてつもなく難しいコード進行となってしまうDrニール 君。ここで、一悶着。そんな光景を私は遠目でビールを飲みながら、見守っていた。 やれやれ先行きが見えるぞ!・・・と、内心思っていた。その後本性をめきめきあ らわにしてきたDrニール君、次々とニール・ヤング、クレイジー・ホースCS&N等 の曲をピックアップし、練習曲だぞ!と言っては、録音したテープを持って来る。こ ういう感じのスタートだった。

ある日、ハーモニーに挑戦した。目茶苦茶だろうという予想を大きく外れて、個性の 強い3火との声が見事にピッ
タンコはまってしまったのだ。学生時代バンド仲間で、 1曲終わる度に大真面目な顔で「かっこええなぁ!うちら!」
と自己満足に浸ってい たのと同じ現象がここでも起こった。30をとうに超えた、おじさんとおばさんバン ドの6つの目は大きく見開き、「くそったれにGoodじゃん?」と・・・期待も していなかったマージと私までも「くそったれにGoodだね!」と相槌をうつ始末。それ以来、 俄然3人がヤル気を出してしまった。

バンド・マスターとなってからのDrニール君に意外な優しさに遭遇した。時々実家と の電話の直後に陥るホームシック。数日悶々と気分が滅入っていた時、彼は言った。 「HIROKO!君は強くてたくましい人間だ!スコットランドはこれから夏がくるん
だ! 温かくなるしさ!」と、彼なりのありったけの元気ずく言葉をかけてくれたのだった 。(人をゴジラのように言うなよな!)などと思いながらも、今までに見えなかった 心優しいスコッツマンの友を感じてしまった。

さて、こんな調子で練習は進んでいる。この成果の発表会は、9月に訪れる彼のバー スデイ・パーティーやNEW YEAR'Sパーティーに盛大に華々しくデビューすることだろ う。

Drニール君には、今1つお楽しみが加わった。最近購入したパソコンでようやくイン ターネットに漕ぎついた。それからというもの、毎晩ニール・ヤングのホームページ にアクセスしては情報チェックすること・・・それとE-mailである。だが、このテ クノロジーとは無縁の田舎街アバディーンには、回りにE-mailアドレスなんぞを持つ 友など誰もいない。しかるに電話で充分済む距離なのにジャンジャンE-mailを送って きてくれる。勿論受け取れる相手は私ぐらいしかいない。





機械が俺を嫌っている

By Hiroko in August 1998

やたら機械と相性が悪い人間がいる。 新しく機械を購入したばかりであるにも関わらず、自分の思うように動いては くれないのだ。 勿論そういう人間は機械にうといくせに、やたらテクノロジーを追いかける。 分厚い説明書を読むなんてこともしない。 まるで、子供のように「このボタン、何やろ?押してやろ。プシュっ!」で、押しては いけないボタンを押して、ぶっ壊してしまうようなタイプの人である。 やたら嬉しがっていじくりまわしているので、自分がどんな操作をしたのか、全く覚えては いないから、「何をいじったんだ?」と、問われても答えられない。 御なじみのDrニール君が、この典型的な人間である。 新しいコンピューターを購入した。 ホイホイ嬉しくって、あれこれいじくっているうちに、大切なソフトを削除して しまう。

「hiroko!どーなってんだ?」とTELが入る。
「レズ!(Drニール君の本名)一体何をどういじったの?どこを触ったの?」 などと聞いても、超大まか人間のDrニール君は、 「わかんねぇ、機械がおかしいんだ! PCワールドめ!俺に不良品を押し付けやがった!」と、シャウトする。 ウソである。 明らかに嬉しがっていじくって、ソフトをぶっ飛ばしたのである。

「あのねぇ、説明書を始めにちゃぁーんと読んだの?」
「そんなもの、ない。くれなかったぜ!」
うそである。 いくら大まかなスコットランドのPCワールドであっても説明書ぐらいはくれるはず である。 とにかくこの手の人間は、何でも他人や機械のせいにする。 そのうえ、人の言うことは聞かない。

暫くたって、彼はスキャナーを購入した。 大好きなニール・ヤングの写真をスキャンして、オリジナルTシャツを作りたくて 仕方がない。(もう40をとっくに超したおっさんである) しかし、またまた機械が思うように動いてくれない。
「hiroko、どーなってるんだ?」
(知るか!) その後、PCワールドに問い合わせ、正しい操作方法を学んだようだが、人を巻き込んで おいて、 騒ぐだけ騒いで、その後の連絡はしてこない。 自分のミスを絶対に認めたくないのである。 「あれから、スキャナーの方はどーなったの?」と聞いても「ああ、あれは、もう 大丈夫だ!」と、それだけなのだ。

彼は独自でニール・ヤングの生テープやコンサート・テープなどから、同じような 熱狂的なファン達と共にCDを作り、そのカバーを彼が担当している。 彼がデザインしたものである。 出来上がると、おっちゃんはもう嬉しくてたまんない。 その絵をスキャナーの読み込みを高品質の最大値にして、クオリティー抜群の 恐ろしくドでかいファイルを作り上げた。 そのドでかいファイルを今度は自分の知っているありとあらゆるE-mailをもつ人間に人の迷惑を省みず発信しまくるのである。

ある日、hirokoはいつもの如くMail Boxを開ける。
「うん?Drニール君からだ。。。」
このドえげつなく重たいファイルのくっついたE-mailをダウンロードするのに、 何と50分を費やしてしまった。 開けてびっくり玉手箱である。 それ程たいそうな絵でもない。別段見たくもない画像に50分も費やしてしまったのだ。 圧縮などということを全く知らないのである。 これには、さすがのhirokoも堪忍袋の緒が切れた。 即座にDrニール君にTELをかける。

「Oh!hiroko!hiroko!どうだ!絵を受け取ったか?」と、能天気である。
「あのなぁ、レズ!、圧縮をかけてない絵なんぞ、いらんで!」
「圧縮ってなんだぁ?」
「・・・・・」もう話もしたくない。こーいうおっさんとは・・・
その後も懲りずにドでかいファイルがズドンズドンとくっついて来る。 もうこれは言わねばなるまい。
「レズ!絵はもう送らんといて!50分もダウンロードにかかるようなファイル なんていらん!一体誰がこの50分間の電話代払うと思てんのや?そんなに見せたいん やったら、ここまで見せにきたらええやんか!同じアバディーンやねんから、 もうE-mailで遊ばんといてんか!」と、きつく叱ってしまったのだった。
少々きつく叱りすぎたかな?とは思ったが、私は嫌というほど彼の性格はよく知っている。 しかしこれにはいつも図体で圧倒するDrニール君も驚いたようだ。 よほど堪えたか、直後にかわいらしく、「ごめんね!」と言ってきた。 こういうおっさんは、たまには喝を入れて叱ると効果がある。 それから暫くは、MACFADYEN家も平和を取り戻したのであった。

さて、クリスとhirokoが休暇で日本へ帰るということを嗅ぎ付けたDrニール君は、 以前から欲しいものがある。 録音機能の付いたミニディスク・ウォークマンである。 UKの相場はソニーのもので、一昔前の機種が£259.00(約5万円強)で、店頭に 「高値の花なのよぉーん」と、座布団をひいて鎮座している。 これが日本では、この半額で手に入る、まして最新のものである。

まぁ、1台ぐらいは彼の為に荷物のスペースを空けてやってもいいか・・・等と 思ったのが間違いのもとだった。 日本の友達に頼んで秋葉原の価格を調べてもらい、各メーカーのパンフレットを 送ってもらった。 やはりさすがのhirokoもうーん。と頷けるほど安い。 早速Drニール君がかけつけ、うひょうひょとパンフレットを愛しくめくっていた。 もう目が「へのへのもへじ」にひん曲がっている。 さすがのDrニール君もニッポンのテクノロジーには降参してしまっていた。 「俺んちのオーディオはすべてパイオニアだ!だからパイオニアがいい! これ!いかすじゃないか!格好ええやないか!」などと、ひとしきりはしゃぐと そのパンフレットを手に家に戻っていった。

さて、旅行の前日となって、彼ははたまたかけつけてこう言うのだった。
「俺には、これ!俺の事務所の同僚には俺と同じのパイオニアのこれ! それから、ピーター(彼の長男)の誕生日が近いから、あいつには、パナソニックのCD・ウィークマン、うーんとそれから俺の録音マイクと、 アンドリュー(彼の次男)のCDウォークマンの充電バッテリー・・・・」
「・・・おいおい!ちょいと待った!3台もかよ!」クリスがポッカーンと した表情でDrニールを見つめる。
「え?駄目なのぉ?」と、Drニール君は今にも泣き出してしまいそうな切ない 表情に変る。 まるでだだっこが大人に哀願するようなまなざしに、ひょっこり騙されてしまう 気のいい二人。
「仕方ねぇーなぁ」で、眼が点になった二人に「へのへのもへじ」のDrニール君 は、総額をキャッシュでポンと置いていった。

全く図々しいとはこーいう人間のことを指すものである。 そうでなくとも、こちとら土産やら着替えやら荷物でパンパンに膨れ上がるだろうに 3台も買ってこいと言う訳である。
「今回だけだぜ!」で、仕方なくこの願いを聞き入れてやったのだった。

無事にDrニール君の頼まれ物を引っさげて、アバディーンに戻ってきた。 私たちは、てぐすね轢いてトグロを巻いて待っているであろうDrニール君に早速 TELを入れてやった。
「帰ってきたよ!しっかり買ってきたぜ!」
彼は、ものの10分もたたぬうちに、超スピードでスーパーマンの如く飛んできた。 ドでかい体をゆさゆさ揺らし、100万ドルの微笑みを浮かべながら、「うぉー!」と しきりに吠えていた。
「日本はどうだった?」とか、「楽しかった?」だとか、普通の人間であれば 聞きそうなものだ。 貰うものさえ貰ったら、それでいいのだ。 そそくさ、帰宅を急ぐ彼であった。全く自分のことしか考えてはいない。

翌日、またまただ!
例の如く「hiroko、この機械おかしいんだ!」
「何がさぁ?」
「充電ができねぇーんだ!普通のアルカリ電池なら動いてるんだけど・・・」
「何か変な操作したんやないの?」
「いや、わかんねぇ」

帰国前に、 「充電電池を充電するのにはUKの電圧と日本の電圧は違うから、変圧器が いるよ!持ってるの?」と聞いたが、「大丈夫だ!」と彼は答えたのだ。 まして、彼は自宅には立派なミニ・ディスク・プレーヤーをしっかり持っている のであるからして、別段充電なんぞしなくても、普通のアルカリ電池があれば そうそう大した問題ではない。 よほど長時間外で使用するなどと言う場合にしろ、その分の電池を持っていりゃぁ いいことである。

「変圧器は正確なものを使っているの?」
「I think so....」
どうも彼の「I think so」というのが疑わしい。
「とにかく、あたし変圧器持ってるから、一度こっちで試してみたらいいよ」
と言うと、はたまたスーパーマンはやってきた。 hirokoはしまってあった、変圧器を取り出して、アダプターをつけ、3つ又コンセント をくっつけて、電源をON!
「う・う・動いてる!」
「あたりまえやんか!」
「るせぇー」
「何なのさぁ・・・?」
ただ単にDrニール君の変圧器がおかしかっただけのことである。
「これ、ちょいと貸してくんない?」で、問題は解決したかの様に思われた。

しかしまた翌日になって、「おかしいんだ!やっぱり機械がおかしいんだ! それともhirokoの変圧器がおかしいんだ!」などとトボケたことを言い出した。
「あのねぇ、今まで何も変圧器で1度も問題なんてあったことないよ!」
「うーん。変だ!へんだ!」
彼の家に持ってかえると動かなくなるとは・・・

コンピューターにしろ、スキャナーにしろ、ひょいとすると彼の家には、機械 を嫌う悪霊が住み着いているのかもしれない。 それとも、Drニール君自身から、機械が嫌う変な匂いかオーラか何かを発して いるのかもしれない。 そもそも、MIDウォーク・マンなのである。 別段充電などしなくても、電池で動くのであればいいではないか! もともと外で聞く為のものなのであるから、自分の家には、立派なプレーヤーが あるのだから・・・

しかしここである想像が働いた。 以前彼はCDウォークマンを購入した。 これはジョギングしても、その振動で止まることなく、まさにジョギングをする 人の為にあるようなシロモノである。 これを購入したDrニール君は嬉しくってしょうがない。 もともと、ジョギングなんて柄ではないし、まして腹が出過ぎてそんな体力もない。 しかし、彼はそのジョギング・ウォークマンを引っさげて、ジョギングを始めた のである。 彼の近くに住んでいる友達がそれを目撃していたのだが、ものの3日で彼の姿は 消え失せた。 もともと、ジョギングなんぞには、何ぁーんにも興味などないのである。 ただ、彼はその「ジョギングをしながらでも音楽が聞ける素晴らしいマシンを持っている ん だぞぉー!」 これに酔いしれているのである。
ただ、これを誰かに見てもらいたいだけなのである。
「ジョギングしながらでも音楽が聞ける最新鋭のマシンを持っているのね・・・」 と、誰かに思われたいだけなのである。 おめでたいおっさんである。

このエピソードを思い出すだけで、MIDウォークマンのその後の様子が伺える。 UKではまだ売っていないパイオニアの最新鋭の超小型MIDウォークマン。 部屋には、備え付けてあるプレーヤーがあるにも関わらず、ソファーにどっぷり 深深と腰をおろし、ドでかい図体からおおよそ反比例した超小型マシンをヘッドホーン をしながらうっとりと聞いている。 但し、1人ではつまらない。誰か人を呼ぶのである。 そしてその誰かの前で、それを聞いている姿を見てもらいたいのだ。 そういうことをやってるに違いない。 このhirokoの予想はもののズバリと的中した。 共通の友達のデイブ君が、その白羽の矢に当たったのであった。

同じように持ってかえった同僚は賢い。 きちんと説明書を読んで、ましてその彼の友達というのがパイオニアに勤めているし、 まさに何の支障もなく快適に作動しているという。 私はMIDウォークマンなんぞは持っていないから、 「同僚に聞いてみたらいいじゃない!」と、hirokoは言うが、Drニール君は モゴモゴと話をごまかす。
嫌なのだ。 同僚に自分のアホがばれるのが嫌なのである。
どうせ、「これ何やろ?押しちゃぇ!プシュ!」ってなことで、何か変な操作 でもしたのだろう。
全くやっかいなおっさんである。 もうそろそろ自分が機械に嫌われていることを認識してもよさそうなものなのに・・・





hirokoのリベンジ

By Hiroko in January 1999

何?hirokoのリベンジ(復讐)とは、新年からおだやかではない。 そう、hirokoはただ今、Drニール君と絶交中なのである。

A HAPPY NEW YEAR!で迎えた1999年。 日本では何やらノストラダムスの大予言とかで、「どうなるんやろ?」と 興味津々の年なんだろうが、こちらでは、ノストラダムスは話題にすら上ってはいない。 ただ、今世紀最後の年ということで、人々は何かをしなきゃぁ、という思いだけで 、各旅行会社などは、大々的にいろんなパッケージツアーを組み立てて、人々を 誘い込もうとやっきである。

話がそれたが、1999年の幕が開け、元旦の夕刻は通例通り、Drニール君んち で新年会である。 いつものように日本料理を詰め込んで、ギターを持参し、参加とあいなった。 いつものメンバーが集う新年会。 Drニール君も前日あたりから下拵えした御自慢の料理の数々がダイニングルームの テーブルに色取り鮮やかに並んでいる。 もう彼もこの時点でホロ酔い加減である。

毎度のことながら、彼んちのパーティーに行くと何を飲まされるかわからないので、 要注意なのである。 前回のグエンの誕生パーティーでは、クリス君はDrニールにほいほい注がれるカクテ ルの急ピッチ攻撃に帰りは足がタコになってしまって、どうやって帰ってきたのか分からないほどのヨレヨレ状態だった。 今回はフィドロ弾きのピートも加わり、久方ぶりのDrニール・バンドのお披露目会 となる。 選曲だ
けは馬鹿ほどあるのに、どれひとつとして最後まで完成したことがない 曲の中からまともなものだけをピックアップし、即席のリハーサルを済ませる。 Drニール君は超ご機嫌だった。 本番もヘタクソではありながら、ずっこけて途中で止まることなく最後まで流す ことが出来、もう御満悦である。 しかしよかったのは、この時までのことである。

Drニール君のグラスには、並々とカクテルが注がれ、空になってる試しなどなかった。 今日はことのほか、どえらくピッチが早い。 (アブネェーなぁ・・・このまま、バタンキューのパターンかいな??)と、思いながら 見守っていた。 だが、どういう訳かこの日は違った。

何がどう気に入らないのか、段々とブルーになっていくDrニール君。 多分フィドロ弾きのピートの独演となり、自分がうまくそれに付いていけないことが 気にいらないのか、酒の勢いを加えて言葉が乱暴になってくる。 いつものことながらの「F-WORD」がびゅんびゅん飛び交う。 この機嫌が悪い時に、奥方のグエンが皆をダイニングルームから、リビングルームへ 移動するように促す。

ここで、Drニール君のくすぶり続けていた怒りが大爆発したのであった。 グエンにめがけてシャウトし、友達のリンゼイからもらった新年のプレゼントを 床に投げつける。 (しかし、絶対に壊れない所を選んで投げつけるあたりが、小心者のやることである) どでかい図体がもうコントロール出来ない。バターンと、机上スタンドの上に倒れ込む。 Drニール君とグエンはまだ階下でやりあっている中、私たちはリビングへと移動する。 暫くしてグエンもリビングへ上がってきて、私たちに加わる。

しかし、階下で大人しくミニディスクでも聞いていりゃぁいいものを、それを見てくれる 観客もいなくて、ひとりぼっちにされたDrニール君は黙ってはいなかった。 怒りに拍車がかかり抑制を知らない酔っ払いと化したDrニール君が上がって来る。 部屋に入ったと思えば、一声シャウトし、バタンと大きな音をたてて、出て行く。 出ていったと思っていたら、また入ってきてシャウトをし、またまた出て行く。 何度かこれを繰り返す。 私たちは眼が点状態で、無視をする。 このシャウトの中に、「F-JAP!!」 (うん?)これを聞き逃すはずはあるまい。

何を血迷ったのか、今度は公衆の面前でとこもあろうに、暖炉に向かって、トイレと 間違えたのか、履いていたGーンズを脱いだのである。 若くてムチムチのフルモンティなら、Hirokoだって大歓迎ではあるが・・・・ お金を払ってでも見たいぞ・・・・ しかしこんな腹の張り出た40過ぎのおっさんのロンパン姿なんぞ, お金を頂いたってゴメン被る。 ここはジェントルマンのお国柄、いくらフリードォーム!のスコット
ランドとは言え、 かなり失礼極まりないことである。 いくら彼らの夫婦喧嘩を見慣れている私たちであっても、これには一同目を丸くして驚い ていた。 その上、口にほお張っていたチキンの足をグエンに向かって投げつけて、はたまた バタンと扉を力いっぱい音を立てて階下に降りていった。 どえらい修羅場である。

グエンも馴れているとは言え、皆の前でこんなことをされたのだから、心中を察すると 可哀相で見ていられなかった。 私の連れて来た日本の友達に・・・ 「このドクター・ニール君とやらを、日本へ持って帰って頂戴!もういらないから!」 精いっぱいの彼女が放つジョークだった。

ふと隣のクリス君のグラスも今日はピッチが早い。 「もう、そろそろ帰ろうよ!もうたこは嫌だからね!」と、促した。 彼のジャケットを探しに階下へ降りていくと、Drニール君はダイニングのソファーで 伸びていた。 完全に眼が座り典型的な蛇がどくろを巻いたような目をして、今度はhirokoに 食い掛かってきたのだった。

「hiroko!何で帰るんだ!お前もグエンと同じでワイフィーな奴め!」
「hiroko!何で半パン履いてるんだ!」(ほっとけよ!)
「英語を喋れ!Speak English!」

いいたい放題言い放ったのである。 ここは、hirokoも大人である。 こんな酔っ払いのおっさん相手にしたってしょうがあるまい。 腹の底でめらめらと炎の上がるのをぐぃっと堪えて、(今に見てろ!この酔いが 覚めた時、うんとこらしめてやるぞ!)と、ニヒヒと彼を見かえしたのだった。

こういう小心者の男のやることはわかっていた。 案の定、数日後彼からE-mailが入ってきた。

「Mr&Mrs Mac、 新年はうちに来てくれてどうもありがとう。hiroko、料理を持ってきて くれてどうもありがとう!(今まで彼からこんな手紙は受け取ったことはない) 僕のbadビヘイビアーをどうか許してくれ!何も覚えていないんだ。翌朝、グエンから 一部始終を聞いて僕はがくぜんとした。etc・・・・」

このメールを読んだクリスの目がホコホコとヘの字に曲がる。 勿論hirokoの目もへの字に曲がる。 クリス君の意地悪い眼がきらりと光って、すぐに彼に向けて返信メールを打ち始めたの だった。

「Dear Boss, 困ってるんだ!hirokoがあの晩以来、えらく落ち込んじゃって BADムードなんだ。それに英語を喋ってくんないんだ。もうバンドも辞めるって さ・・・2月のホリデイも取りやめで、自分だけ日本へ帰るって言い出すし・・・ もう大変なんだ!・・・」

これを見て、hirokoもクックックゥーと意地悪く大喜び。 うん!ここまでやんないとね。 いくら酔っ払っていたと言えども、もう40を超した社会的立場のあるおっさん の言動ではないのだから・・・ここは一発ガツンである。 このメールを送ったのだ。(奴は必ずやってくる!御機嫌伺いに必ずやってくる!) hirokoは強い確信を持つのであった。

休みが開け、再びhirokoは職場に戻った。 皆が口々に新年のあいさつを交わし、New Yearはどう過ごした?どうだった? とお互いに声を掛け合う。 マネージャー兼オーナーのアンが、「hiroko、どんなNew Yearだったの?」と 聞いてきた。 この時、ムムムゥィーとDrニールのアホ面が浮かんできたのっだった。

「実はね、毎年恒例で、Drニール君(レズ)の家で新年会があって、とっても 楽しかったんだけど、レズがえらく酔っ払っちゃって、ズボンは脱ぐわ、あたしに向かっ てワイフィーだって言うし、英語を喋れ!って言うし、おまけにF-japって言ったのよ! もうむかついちゃった。そりゃぁね、あたしのエイゴなんてまだまだだけど、 酷いやんかねぇ・・・?」

「・・・・・」アンは、開けた口がふさがらず、口に手をあてたまま、 「How awful !! 信じられないわ!!何て失礼な!あのレズが・・・!」 呆然とたちすくんでいた。

この「ラボーンバゲット」は以前はDrニール君の働く事務所の間隣にあったのだが、 3年前に現在の場所に移転したのであるが、彼はその時代のお客だったのだからして、 アンは彼のことをよく知っている。 ダンディーを装っていた彼である。 アンは典型的な保守的なアバディーンの女性であるから、その驚きはそれはそれは大変な ものだった。 平常に戻った店も、年明けは町中がバーゲンセールで人々がクリスマス同様に シティーセンターに集まり、ごった返している。 当然のことながら、店の方も超満員だった。

(奴は必ずやってくる!)hirokoの神通力。 ふとキッチンの勝手口に目を遣ると、まるで物語である。 奴がまるで悪さをしてバツ悪く母親を見上げるような目をして、ドアのすみに どでかい体を隠しながら、にょぉーっと顔だけを出しているではないか! 涙が出て来るほど可笑しいが、ここはまず無視で決める。 ランドルが「hiroko、変なおっさんが話したいって待ってるよ!」と、伝えに来る。 hirokoは込み上がる笑いを殺して、般若の面のような顔を、にょぉーっと Drニール君に浴びせ掛けたのだった。 あみだ婆の「見ぃーたぁーなぁー?」の世界である。

両手を開いて「今忙しいのよ!」と、言い放っただけで、すぐに後ろを向いたのだった。 その後ろから、彼は「hiroko、アイム、ベリー、ソーリィー!」と、図体に およそ似合わないか細い声で言うのだった。

これを見ていたアンは、もう可笑しくってたまんない。 しゃがみこんでクックックゥー。「来たのね!クックックゥー!」 でもさすが、アンはアバディーンの女である。 「hiroko!それでいいのよ!彼にはもっともっと反省が必要よ!これはhirokoの 為でもあるし、レズの為でもあるわ!よくやったわね!クックックゥー!」 ところがこうしたいきさつを一切知らないシェフのグレンやクリスやランドルは もう超ビックリなのである。 いつもはヘラヘラと笑っているhirokoが突然般若になったのだから・・・・ ランドルは口をパコォーと開けたまま、抜き足差し足でhirokoの後ろを通過する。 「もう!止めてよぉー!これにはね、れっきとした訳があるんだからさぁ!」と 肩をポンと叩くと、ランドルは「ヒョェー」と奇声を発して飛び上がるのだった。 どうやら、本気でhirokoを怒らすとどういうことになるのか彼にも分かったようである。

家に戻ったhirokoは、何を言ったのかすら覚えてないというDrニール君に向けて 返信e-mailを出した。

「レズ、あたなはわたしにF-jap、エイゴを喋れ!ワイフィーな奴!って言ったのよ。 今まで私は遠く故郷を離れて、アバディーンで出来た最初の友達だと思って いました。だからどれだけショックで悲しかったか分かりますか? すぐには、あなたのこと許すことは出来ないわ。だから時間を下さいね。 でもこれだけは言わなきゃね。 料理はとっても美味しかったし、誕生日のプレゼントはとってもゴージャスだっただったわ!ありがとう! hiroko・・・・・」

我ながら名文である。

・・・とまぁ、これがhirokoの新春リベンジということなのである。 あと、何週間か反省を促して、フロリダから戻ったら、土産の一つでも持って 事務所を訪ねてやる予定である。







Drニール君の「こいつを聞け!」

しばらくご無沙汰だったDrニール君。
3月の末にばったりテスコのレジで出くわした。

大きな図体で籠一杯の食料品をし入れて、その体とは似合わないMINIディスクウォークマンで音楽を楽しんでいる。
彼と会うときにはいつもイヤホンをさしている。
彼の日常の世界はいつも音楽なのである。

「いやぁー!久しぶりやんか!どーしてた?」
と同じレジのラインに並ぶと、奴はびっくりにっこり笑いながらイヤホンを外して、公衆の面前だというのに抱き着いてきた。
(おいおいおっさん!人が見てるっちゅうねん!)
素早くほっぺにチューして、Happy New Year!ときた。
そうか、そーいや年が明けてから会ってなかったんだよね。
いつもは元旦の夕刻から2日の朝方にかけて、Drニール邸では大々的なパーティーを催しているんだが、今年はお呼びがなかったのだ。
それもそのはず、昨年のパーティーの後、喧嘩してしまった仲である。
hirokoが恐くて敬遠していたのか・・・と思っていたが・・・

「正月はどうしてた?」と聞くと、 「大変だったさ!クリスマスから年末・元旦にかけて、まず息子が風邪引いて、それから次々に移っちゃってよぉー!元旦は家族全員ベッドの中って訳さ!」
「かわいそーに!」

「ねぇ、ところでCSN&Yのその後のニュースは入ってる?UKツアーは実現するかどうか?」
「おいらは行くのさ!」
「うん、知ってるよ。だからねぇ、UKツアーはありそう?」

「だからおいらはワシントンへ行くのさ!」
(おっさん。分かってるちゅうに・・・フレッド君から聞いてるよ!)

「いいじゃない。それよかUKには来るの?」
「おい!チケット余ってるぞ!」
(おっさん、どつかれたいんか?)

「CSN&Y」はアメリカはウエストコーストを代表する超bigなバンドの名前である。
映画「小さな恋のメロディー」で最後に流れたサウンドトラック「Teach Your Children」を歌っているバンドといえば分かる方もいらっしゃるだろう。
C(クロスビー)S(スティルス)N(ナッシュ)&ヤング(ニールヤング)ということで、4人グループである。
この最後のヤングこそDrニール君の教祖様という訳である。
hiroko自体もニールヤングは大好きだが、どちらかと言うとソロよりも4人が揃ったCSN&Yの大々ファンなのだ。
Drニール君はhirokoがCSN&Yの大々ファンだということを知っている。

奴はhirokoの「いいなぁ、うらやましいなぁ」って言葉を待っているようであるが・・・死んでも言ってやるものか!である。
こちとら、いくら大ファンとはいえ、ワシントンぐんだりまでコンサートを見に行けるほどの余裕はない。
がだ、UKに来ることになったなら、ロンドンまでなら何とかして都合をつけて参加したいと常々思っていたところであった。

1月の24日からスタートした全米ツアーは3時間にも及ぶ素晴らしいものだということはWEBを通してレビューにて確認済みだ。
腹の底では「馬鹿ヤロー!行きてぇーよぉー!」と叫んでいるが、全米ツアーの後にはヨーロッパへやってくるという噂がちらほら入ってきていた矢先である。
勿論本場のアメリカで見るコンサートは格別だろうが・・・

スペイン大好き人間のニール君はここ数年来、ホリデイ先をアメリカに変更している。
すべてはコンサートに参加するためである。
昨年はニールヤングのソロ・コンサートの為にニューヨークに飛んでいる。
今回は4月の9日ワシントン公演に参加する運びとなり、特等席を£200で入手して実に大満足のきわみ。

行くんだもんねおいら!ワシントン!
もう奴の頭の中にはこれしかない。
人の言うことなど耳栓だ。

結局奴はそのまま人の質問を無視してルンルン気分でテスコを出て行った。
奴の背中には、

「行くんだもんね。おいら、ワシントン!ぶッひっひィー!いいだろ?いいだろう。らやましいだろぉー!MIDIウォークマンで録音し
ちゃうんだもんね。いいだろー!ブッヒッヒィー!行くんだもん。ワシントン!」
と書かれていた。

これほど幸せなおっさんの顔を見るのも久しぶりであるが、hirokoは思わず購入したじゃがいもを奴に向かって投げてやりたくなる心境にかられてしまった。

昨日、はたまたテスコで奴に出くわした。

「ねぇ、いつ帰ってきたの?どうだった?楽しかった?」
とhirokoはDRニール君に歩み寄った。
奴はやっぱりウォークマンを聞きながらレジに並んでいた。
おもむろに耳からイヤホンを外し・・・・
「こいつを聞け!」と差し出すのだった。
(おいおい!ここは公園やないんやで、レジで並んでいるんや。ああ、次の番や・・・後ろの人が迷惑するやねぇーの!)
ちょこっとだけイヤホンを耳にはめ込んでその素晴らしいサウンドを確かめた。
さすがメイド・イン・ジャパン製である。
2年前に里帰りした時に買って帰ってきてやったものである。
しかし酔いしれてる場合やない。順番があたいの番や。

「最高だったぞ!じゃぁな。おいらは忙しいんだ!」と、そそくさ食料品を袋に詰めこんだニール君はそそくさとテスコを後にした。
まるで台風みたいなおっさんだ。

その後ニール君はCDショップのフレッド君を訪ね、店がお客でごった返しているというのに「こいつを聞け!」と、イヤホンを差し出したのだそうだ。
「ああ、あたしもテスコでやられたよ!」と大笑いだった。
奴のことだ、「こいつを聞け」と、知り合いに誰かれとなくイヤホンを差し出しているに違いない。

だが間違っても奴からコピーのTapeを受け取ったものは誰もいない。





Mr ナスティー君

イースター・ホリデイがやってきた。
学校は2週間〜3週間も春休みとなり会社関係は4月の14、15、16の3連休となった。
どこもかしこもお店を見渡せばイースターの玉子だらけである。
そんなイースターホリデイの土曜日の午後。
hirokoは「今晩はカレーだぞォー!」と張り切って台所でトントンと野菜を刻みながらカレーの準備にかかっていた。
すると電話が鳴る。
「Hello?」
「レズだ!バーベキューだ!午後から来い!」
「・・・・・」。。。。
それだけ言って電話を切る。
何やねん?今のは・・・
元気にしてるかとか何やってたんだ?とか一言もその手のたぐいの挨拶は一切省略する。
いつもながらの彼の電話である。

・・・・おいおい。
何でもっと早よう言うてくれへんのや?
今カレーのフィナーレを迎えようとしているつうのにぃー・・。
他人の都合など全く無視するやり方。
かなり知り尽くした相手でないとこんな横暴なインビテーションは通用しないではないか?

でも案外hirokoはこういうたぐいは大学時代にどっさり経験しているからそうそう苦にはならない。
大学の下宿時代なんぞは今の贅沢な若者とは違って携帯電話なんぞなかったし、ましてや電話すら共同の公衆電話しかなかった時代のことである。
トントンと部屋のドアを叩く音。
「誰やぁ?」とムゥーと顔を出すと腹を空かせた先輩が「飯食わせてくれぇー!」などと予期せぬ訪問者で食堂代り。
「誰やぁ?」と顔を出すと、「3時間目休講やってん、コーヒー飲ませてぇー」などと喫茶店代り。
反対に「今乗ってるぞ!来い!」で予期せぬバンドの練習が入ったり、「ドライブ行くぞ!俺2時間目休講!」
こんな調子で予定もくそもあったもんではなかった。
むしろ丁重なインビテーションとなると却って肩苦しい。
まさにそんな感覚が蘇って、懐かしさを覚えてしまう。

まぁ、カレーは明日でももつ訳だし・・・ってなもんで、クリス君と二人で長閑な土曜日の3時、久しぶりにDrニール君のおうちに足を運んだ。
いつもは毎年元旦の夕刻に、彼の家で新年会が開かれていたのだが、一昨年は家族全員が風邪でダウン、そして今年は不幸があって取りやめとなって、かれこれ2年ぶりってことになる。
随分以前はバンドを組んでいたので、しょっちゅうお邪魔して練習していたのだが、奴とヴォーカルのマージョリーが喧嘩して結局自然消滅の憂き目となった。
最もこれは目立ちたい彼があまり自分が目立たなくなってしまうと子供のようにスネてしまう。
「なぁ?マージのヴォーカルどう思う?フラットなんだよ。おいらがヴーカルとる方がいいと思わねぇーか?」とそっと耳打ちされたことがある。
確かにマージの声は合唱団には向いているが、バンドのヴォーカルとしてはイマイチの面があったにしろ、 バンドを組んで彼女がヴォーカルと決まった以上は彼女を尊重し自分達はギターに専念すればよいものを・・・
彼はやっぱり目立ちたい。
ならば、一人で弾き語りをやってりゃいいのである。
どうも我が侭なアダルト・チルドレンである。

ずっと長い間借りていたギターを返すついでもあったので、せっせとギターを担いでDRニール君のおうちを訪れた。
もう裏庭から美味そうな匂いの混じった煙がもくもくと立ち上っている。
「おおお!久しぶり!」
既に先客がソーセージをかぶりついていた。
正月以来のレズリーとピートである。
彼等は冬の間、仕事を求めてエジンバラに帰ってきて、また春夏秋をフランスで暮らしている。
今月末にはフランスに戻るので、このイースター・ホリデイに両親を訪ねにエジンバラから登ってきたというので、急遽このバーベキューが開催されたといういきさつだった。

Drニール君は腹回りのサイズがまた一段とどでかくなったようだ。
相変わらず料理を作るのが趣味みたいで、バーベキューのコンロ前でエビのたくさん入ったパヤラを作りソーセージや野菜を焼いている。
ステーキもどっさり用意されていて、いつもながらかいがいしく皆のオーダーをとりながら、今回は赤ワインでパヤラとステーキをご馳走してくれた。
午前中はまさに絶好のバーベジュー日よりだったのだが、午後からぐーんと冷え込んできて、野外のバーベキューは寒い中だった。
そのうち雨がポツリポツリ。
やっぱりスコットランドである。
私達は手分けしてグラスや皿などをキッチンへと運び入れ、場所をリビングルームに移動させて、のんびりと世間話に話を弾ませていた。

Drニール君はどこへ篭もっているんや?と、思いきや「hirokoぉー!こっちへ来いよぉー!」である。
ほらきたか!予想は当たった。
彼は宝くじが当たってコンピューターを現在最高級のもに取り替えていたのである。
それを見せたくて仕方がないんやろ・・・
案の上、彼は大きなディスプレイの前にでかい腹を突き出して背中を丸めて画面に見入っている。
ご自慢のケーブル接続とやらで、ダウンロードの速さを見てもらいたいようだ。
ナップスターに入ってゆき、サーチにタイピングして曲をダウンロードしていた。
勿論私達もナップスターでガンガンにいろんな音楽をダウンロードして楽しんではいるが、何せモデムでの接続であるからダウンロードの速さは格段トロイ。
hirokoは目を大きく見開き「スンゲェーー!早ぁーい!」と感嘆符!!!
そのhirokoの羨ましそうな顔を見るのが奴の魂胆だった。

ナップスターを知らない人にちょいと説明しよう。
ナップスターはアメリカのサイトでここのメンバーとしてソフトをダウンロードする。
ユーザー名やパスワードを入力してログインする。
聞きたい音楽、ダウンロードしたい曲があれば、サーチを選び、歌手名と曲目をタイプすると、全世界に広がっているナップスターのメンバー(ログインしている)のデータベースをサーチしてハードディスク上にあるサウンドファイル から見事に探し当ててくれる。
あとはクリックしてダウンロードする。
このダウンロード中は結構暇をもてあますので、そのダウンロード先のメンバーとチャットをしたり、別の音楽チャットルームなんぞに入って情報を交換したり出来るシステムである。
無料でダウンロード出来るのだから音楽FANにはなくてはならないサイトである。
著作権の問題で一時は続行が危ぶまれたが、今尚クローズされずに開店している。

Drニール君は「hiroko、何が聞きたい?」といとも自慢げに言うもんだから、hirokoもちょいと意地悪くなる。
「ねぇ、シルバーのミュージシャンが聞きたいわぁ!」
「それ、何だぁ?」
「あれぇ?知らないのぉー?ウエストコーストのことなら何でも知ってると思ったのにィー(イッヒッヒィー)」
Drニール君はタイプして検索するが、該当するものが見つからなかった。
もっともそのはずで、ウエストコーストが大流行した頃に輸入版で見付けたレコードである。超マイナーなグループである。
横でクリス君も(イッヒッヒィー)と笑っている。
「Drニール君の操作術を習得したようだね」と耳打ちする。
そうこうしているうちに彼のコンピューターに納められているサウンドのファイルに誰かが目を付けてダウンロードしようと試みている。
画面は自分が他所からダウンロードする時は上にインバウンドとして表示され、誰かが自分のファイルをダウンロード すれば下の欄にアウトバウンドとして表示される。
Drニール君は「また!誰かが俺のファイルを盗もうとしてる!けしからん!」とわめきながら、即座にマウスで右クリックしてそいつを削除してしまった。

「げげげぇー!うっそぉー!何て嫌な奴!レズ!あんたって何てナスティーやの?」
「俺の大事なファイルだ!誰にも渡さんぞ!」
「そういうあんただって人様のファイルを頂戴している訳ちゃうのん?」
「俺はいいんだ!」
「あっ!また誰かが!ダウンロードしやがる!ええい!」

で、はたまた削除!
さすがのクリス君も笑いが止まらない。
二人で口を揃えて「ナスティー、ナスティー!」
・・・・んなわけで、これからは奴のことを「MRナスティー君」と呼ぶことになった。
しっかし、そうか、今迄いろいろトランスファー・エラーってぇーのがあったが、こういう連中がいるからかぁ。
以前私達が或る曲をダウンロードしている最中に75%あたりでこの保持者からメッセージが入ってきたことがあった。
「もうすぐログアウトするつもりなんだけど、君が終わるまで待っててあげるからね」
こういう素晴らしいエチケットを備えた人も世界にはいるもんである。
これを見習ってクリス君も自分のファイルをダウンロードしている人にメッセージを送ったり、興味のある曲を持つメンバーにメッセージを送っていろいろ情報を交換して楽しんでいる。

ところが、クリス君がダウンロードをせっせとしていてようやく99%に達した時にカットされてしまったことがあった。
クリス君は腹が立ってすがさず「THANK YOU」とメッセージを送った。
99%でカットされることを思えば最初の1%あたりでカットされる方が随分とマシなような気がする。
このような経験を経て、クリス君も彼なりにナスティー君に近づいてきた。
というのも自分のファイルをダウンロードしている最中の人にメッセージを送った「Hello!いいチョイスだね。」と、 ところが何の返信もない。
すると彼はこれから僕がメッセージを送っても返信してこない奴は99%でカットしてやる!と怒っている。
彼も立派なナスティー君だ。

さて、話はそれたが、

Mrナスティー君のナスティーぶりは衰えることはなかった。
今度は鉾先をレズリーに向けて、アメリカでどっさり買ってきたリーバイスのシャツやTシャツ類をいろいろ出して来てファッションショーを繰り広げる。
たまりかねたレズリーは「くれるのなら話はわかるけど、くれないのならもう見せてくれなくたっていいわよ!」
とにかくみんなから「いいわねぇ。うらやましいわぁ!」と言ってもらいたいのである。

6月10日。
私達は待望の「ニール・ヤング」のコンサートに行く。
Drニールの愛称を授かっているナスティー君は、「俺は期待していないよ!、アメリカでのコンサートが最高だったからなぁ。」
「でも、行くんだろ?じゃぁ楽しめばいいんじゃない?」
「いや、期待出来ないね!」
どーしてああいえばこう言うやな性格してるんやろか?
こんなことを言いながら、フランスのブリタニーでのコンサートも追っかけていくナスティー君である。
相変わらず訳のわからん男である。
hirokoは今一つ新たに嫌な予感がほとばしっている。
コンサートを見た後、きっと彼は言い出すに違いない。
「バンドをやろう!」と・・・・