Richard Thompson
Queen' hall Edinburgh
07/08/2006


ブリティッシュを代表する職人芸ギターリストリチャード・トンプソンがエジンバラにやってきた。
グラスゴーで毎年開催されるCelticコネクションにも出演し、BBC4のTV放映され、hirokoはワクワクしながらいつか必ず彼のライヴを生で見たいという強い欲望に駆り立てられていた。
60年代後半にFairport Conventionのギターリストとしてわずか17歳という若さで音楽界をあっと言わせた天才ギタリストである。
当時のトラッドFOLK的音楽にROCKをミックスしたそのスタイルはたちまち世の注目を浴びて、同時期のバート・ヤンシェ率いるペンタングルとともに脚光を浴びていたバンドである。
んが・・・hirokoは勿論そのときOn Timeでは全くその存在すらも知らなかった。
On Timeどころか、hirokoの青春期はブリティッシュROCK花盛りそして、アメリカン・ウエストコーストそしてAORへと移行していった時期であったので、ブリティッシュの音楽はROCKやプログレこそ聞き込みはしたが、ブリティッシュFOLKとなると全く無知だった。

しかし、このUKに暮らし始めて、hirokoの嗜好はゴロリと変わってしまった。
勿論アメリカのものも好きだ。
だけど、英語力が日本にいた頃よりもついたお陰で、以前は素通りしてしまったようなシンガー・ソング・ライター
のよさを詩を通じて、メロディーよりも詩を重視して深く聞き込むようになったのも事実である。
そおして、気候、風土、人々などによって大きく変わってしまった。
以前はやたらアメリカものばっかりだったのが、今では殆どがブリティッシュ音楽の占める割合が年々増してきたように思う。
随分前に、友達に大学時代によく聴いていたハワイのバンドやウエストコーストのバンドのものを送ってもらったりしたのだが。・・・何かしっくりこない。
このスコットランドでハワイアンは似合わないし、冷たい北海の吹きつける陰鬱な土地柄にウエストコーストはあまりにも場違いな音楽で「軽すぎる」感じすらした。
ブリテン島の音楽は深い・・・人間の深みと重ね合わせ、詩も深いし、歴史も深い。
そんな深みに益々のめりこむようになってしまった。
勿論ハワイやウエストコーストの暖かくエメラルド・グリーンに輝く海は魅力的だ。
だが、綺麗なだけ・・・hirokoは冷たく、深く、悲しく、厳しい、北海の黒々とした海のほうが似合っている。
文学同様に、そんな陰鬱で憂鬱の暗さの中にこそ、芸術は宿るものかもしれない。

そんな芸術家の一人がこのリチャード・トンプソンだ。
かつてフェアポート・コンベンションのヴォーカル、サンディー・デニーはかなりワイルドで人の言うことを聞かずアルコールに溺れてはいたが、リチャードがギターを弾き始めると、彼女はぴたっと騒いでいるのを止めて「さて!わたしは何をすればいいの?」と真剣なまなざしを送ったという。
それほどリチャードのギターに惚れ込んでいたのである。
これはバンドを組んだことのあるhirokoにはよく理解できる話である。
彼がギターを弾き始めると、誰もが口を閉じる。
それほどのオーラを放つギタリストも珍しい。

hirokoはフェアポートは数枚聞いてはいたが、リチャードのソロに関しては追いかけて聞くことも無かったが、遅ればせながらのファンとなり数枚を所持こそしているが、全てを持ち合わせてはいなかったので、今回のライヴは殆ど知らない曲が多いのだろうなぁと覚悟していた。
しかしだ・・・そんな思案は吹っ飛ぶ。
彼のギターと歌が始まれば知らない曲が続いても聞き惚れてしまうのだ。

8月7日エジンバラのQueen’s Hall。
それほどのキャパはない小さな元教会だった建物で、多くのアコースティックのアーティストが利用している会場である。

ステージに現れたリチャード・トンプソン。
最近のお決まりのスタイルだ。
黒のベレー帽、黒のシャツに黒のジーンズ。丸椅子の上にペットボトルの水が1本。
たった一人でたった1本のギターである。

オープニングはWhen The Spell is Broken。低音でベース音を奏でながら高音でキューンキューン。
この人にはバンドなんぞいらんのである。
3曲目で、hirokoの好きなアルバム「MOCK TUDOR」
から最も好きな曲Crawl Back!!凄い!何と言うパワーなんだ?たった1本のギターでこれだけのパワーが出るものなのか?
おまけに彼の声が素晴らしい!熱唱するリチャード君。
しかし・・・おったまげる。
たった1本のギターでこれほどまでに音色を自由自在に変えることが出来るなんて・・・さすがの職人さんだ。
歌い終えた彼は「Fantastic!singing There!」と自分を褒め称えて、笑いを誘っていた。
又あとで素晴らしい歌声を披露するよ!
5曲目のDad’s Gonna kill meもノリのよいギターワーク。
ベース音と高音が複雑に絡み合って、これまた熱唱!
しかしまぁ、これだけガンガンに弾きまくっていて、たった1本のギターで弦が切れないもんなんやろか?・・・凄いなぁ・・・と口がぱっかり開いたまんまだったことにハッと気がつく。

60年代の終わりに組んでいたグループなんだが・・・とリチャードが話すと、隣に座っていたおっちゃんが「何て名前だぁ?」と、とぼけて訊ねる。
リチャードは何度も聞きなおして、笑いを誘う。
11曲目は・・・うわぁ・・・フェアポート時代の最高峰アルバム「Liege & Lief 」からの「Crazy Man Michael」
おおおおお!切ないなぁこの調べ・・・・
サンディーの天使のような歌声を思い出しながら、何か深く冷たい海の中に沈み込んでいきそうな、そしてサンディーの亡霊がRichardのうしろにただよっているようなそんな気さえする。
全く名曲である。
シャイな人だと聞いていたが、なんの何のよく喋るし、かなりお茶目。
それにジョークもブラック・ユーモアのパンチが効いている。


時間がたつのがメチャクソ早い。
サラリサラサラと流れるようにセットをこなしてしまった。
ライヴが終わってからというもの、すっかりと虜になってしまい、やっぱり買いそびれていたDVDとCD2枚組みのセットを購入した。
素晴らしいの一言である。
特にBBC4でTV放映されたときに演奏していた3曲目のSo Ben Mi Ca Bon Tempo・・・これがずーーーーーっと頭の中にこびりついて取れなくって、やっとここいつに収録されていた訳でもう嬉しくって何度も聞き込んでいる。
おまけにこともあろうに、ギターをマスターしてやろうなんぞ大胆な計画まで立てている。
映像で見たギターワークはツルツルといとも簡単そうに見えたのが・・・・
ギターを手にして・・・あかん!難しい!難しいぞぉー!!!





Set list

1.WHEN THE SPELL IS BROKEN
2.SHE SANG ANGELS TO REST
3.CRAWL BACK(UNDER MY STONE)
4.COLD KISSES
5.DAD'S GONNA KILL ME
6.THE HOTS FOR THE SMARTS
7.PERSUASION
8.MY SOUL,MY SOUL
9.THE SUNSET SONG
10.1952 VINCENT BLACK LIGHTNING
11.CRAZY MAN MICHAEL
12.COOKSFERRY QUEEN
13.SHOOT OUT THE LIGHTS
14.BATHSHEBA SMILES
15.THE GREAT VALERIO
16.VALERIE
17.GALWAY TO GRACELAND
18.WALL OF DEATH